2024.04.16

インタビュー

【渡辺 美優紀】アイドルの光と影[敗れた日の私小説]

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【渡辺 美優紀】アイドルの光と影[敗れた日の私小説]

2021年4月に自分の会社を立ち上げ。6月に初のダンスショーを開催したんですけど、その公演の制作も私の会社で手掛けました。
自分でゼロから制作をしたのはこれが初。大変だったけどやってよかった。やっぱり自由っていい。今はのびのび挑戦できてる。会社を作ったことで、今1番自分らしく仕事ができてるなって思います。


AKBグループを卒業して事務所もやめたあと、事務所との契約上の縛りで2年間表舞台に立てない期間がありました。テレビもラジオもライブもダメ。できることは SNSだけ。
今だったらYouTubeで活動できるけど当時は主流じゃなかったし、インスタライブもなかった時代でまだマスメディアに捉われていた絶妙な時期。 23歳、24歳っていう貴重な時期に芸能活動を禁止されるのはかなりの痛手でした。2年の空白期間には演技の勉強をしたり、海外に留学してそこを拠点として近い国を巡ったりいろんなことに挑戦して時間を有意義に使ってはいたけど、やっぱり1番したかったことは仕事でした。

ー これもダメ、あれもダメ、全部ダメ 空白の2年間は人生イチ落ち込んだ時期

勉強がてらミュージカルのお稽古に通ったりもしてました。劇団だったら咎められることもないかなってミュージカルの役ももらって。でもそれも公演の直前になってストップがかかり、結局私は出られませんでした。何カ月間も練習していたんですけど練習だけで終わっちゃった。配信アプリを使って生配信をする予定が中止になったこともありました。ファンの方も楽しみに待っていてくださったんですけど、配信会社のほうに連絡がきて配信5分前に中止になってしまいました。当時そのことがたくさんニュースになってと
ても辛かったです。配信ですらダメってことは結構ダメってことじゃないですか。これもダメあれもダメ、全部ダメ。何もできない。ことごとく何もできないことに対して結構落ちてたと思います。普段お酒とかまったく飲まないけど、信頼できる友達と一緒のときには少し飲んで泣いたりすることもありました。友達も一緒に泣いてくれた。そのぐらい絶望っていう感じでした。


私が芸能界に復帰して間もなく、事務所をやめたら一定期間活動ができないとかそういう縛りは独占禁止法に引っかかるようになって、一方的に不利益が生じる契約は効力を持たなくなった。私は縛りのキツい時代の最後の人間だったんだなあって思うと感慨深いです(笑)。今の子たちは自由度が高くていいなってうらやましさもあるけど、それよりも理不尽なことはダメだと思う気持ちのほうが強いし、自分の下の世代の子たちがあんな思いをしなくて済むと思うとやっぱりうれしい。


アイドルとか芸能界ってキラキラしてて眩しい世界だけど、キラキラしているぶん、取り巻く環境には暗黒面もあると思う。
グループで活動していた頃、私はキャラ的に“わるきー”だったせいか何かと誤解されてたれてた気がする。「なんで私だけ?」ってことはあった。芸能界って表に出ることより出ないことのほうが怖い。守られすぎているほうが、闇を感じてしまいます。もっと小ズルくうまくやってたほうがよかったのかなって考えたことは何回もある。でも、自分に嘘はつけないし自分がやったことは自分が忘れないから。「あのときこんなことをした」って一生心の傷になる。
十字架を背負ったまま墓場まで持ってくみたいな。そんなことを考えると、不器用でも素直にまっすぐ生きてきてよかったのかもしれないって思います。長い人生考えたら、損することがあったとしても正直な自分でいてよかったなって思います。

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Model_MIYUKI WATANABE
Photo_CHIHIRO TAGATA
Styling_AYA YAGISHITA
Hair&Make-up_REI FUKUOKA(TRON)

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※衣装はすべてスタイリスト私物です
(PECHE 005)
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PROFILE

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雑誌『PECHE』とは、“私”を生き抜くためのビジュアルmag。 ずっと眺めていたくなるような眼福なビジュアル本であり、様々な毎日を過ごす中で一歩踏み出す勇気になるような言葉もたくさん詰まった、お守りのような本でもあります。